中和反応

【中和反応】

酸と塩基の反応で,例えば,塩酸HClと水酸化ナトリウムNaOHが反応すると,塩酸から出る〔 H 〕と 水酸化ナトリウムから出る〔 OH 〕が結合して〔 H2O 〕ができる。また,塩酸のClと水酸化ナトリウムのNaから〔 NaCl 〕ができる。この反応は酸と塩基の互いの性質を打ち消し合うので中和反応という。また,このときできるNaClのようなH2O以外の物質を〔  〕という。

 
 
 

中和反応を化学反応式で書く。・・・ HOHの数が合うように係数をつける。

1)塩酸HClと水酸化カリウムKOH

    HCl(HCl)とKOHKOH)… H1つとOH1つなので,HCl 1つとKOH 1つで反応する。

    HCl + KOH → KCl + H2O

 

 例2)塩酸HClと水酸化バリウムBa(OH)2

  HCl(HCl)とBa(OH)2Ba22OH)… H1つとOH2つなので,HCl 2つとBa(OH)2 1つで反応する。

    
    2HCl
 + Ba(OH)2 → BaCl2 + 2H2O

 

例題 次の酸と塩基の中和反応を化学反応式で示せ。

(1) HClCa(OH)2 (2) H2SO4Ba(OH)2 (3) HNO3Al(OH)3 (4) CH3COOHNaOH (5) HClNH3

 

(1) 2HCl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O  (2) H2SO4 + Ba(OH)2 → BaSO4 + 2H2O

(3) 3HNO3 + Al(OH)3 → Al(NO3)3 + 3H2O  (4) CH3COOH + NaOH → CH3COONa + H2O

(5) HCl + NH3 → NH4Cl

 

【中和滴定】

酸と塩基の水溶液を混合し,過不足なく中和したとき,混合溶液中のHOHの物質量〔mol〕は等しくなっている。この関係を利用して酸や塩基の濃度を求めることを中和滴定という。酸のモル濃度をc,体積をv,価数をa,塩基のモル濃度をc’,体積をv’,価数をbとすると,中和滴定は次の関係式が成り立つ。

 
 

例題 

(1) 0.010mol/Lの塩酸10mLを完全に中和させるのに必要な0.020mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液は何mLか。

(2) 0.010mol/Lのシュウ酸H2C2O4水溶液10mLを中和するのに,水酸化ナトリウム水溶液を10mL要した。この水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度を求めよ。

(3) 固体の水酸化カルシウム0.148gを過不足なく中和するには,0.16mol/Lの塩酸は何mL必要か。H1.0O16Ca40

 

(1) 0.010×10×10.020×x×1 (左右ともmLなのでLにしなくてもよい)

  x5.0mL

(2) 0.010×10×2x×10×1

  x0.020mol/L

(3) Ca(OH)2 0.148g ⇒ 0.14874mol〕 c’×v’で〔mol〕なので,これをc’×v’に代入

  0.16×x1000×10.14874×2

  x25mL

 

例題

0.10mol/Lの硫酸100mLに,アンモニアを吸収させて完全に反応させた。残った硫酸を0.20mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,20mLを要した。吸収されたアンモニアの体積は標準状態で何Lか。

                  

 硫酸H2SO4Hmol=アンモニアNH3OHmol(=受け取るHmol)+水酸化ナトリウムNaOHOHmol

H2SO4Hmol = 2H2SO4mol     

NH3OHmol = NH3mol

NaOHOHmolNaOHmol

 アンモニア(気体)の標準状態での体積をxLとすと,物質量はx22.4mol〕よって,

  0.10×1001000×2 = x22.4×1 + 0.20×201000×1

  x0.35840.36L

 

【滴定曲線】

指示薬 

酸(塩基)に塩基(酸)を少量ずつ加えていく(滴定する)と,混合溶液のpHは少しずつ変化する。指示薬とはpHの変化によって色が変化する試薬で,中和点を求めるのに使われる。

 

滴定曲線 

中和滴定を行ったときのpHの変化を表したグラフを滴定曲線という。中和点前後ではpHが急激に変化する。これは,pHの変化が指数的に変化(10倍ずつ変化)するためである。

 
 

中和点はグラフの直線部にある溶液なので7.0とは限らない。  塩  のとこで説明)ので,この範囲で変色する指示薬が使える。

 

例題 

次の中和滴定を行うとき,指示薬として適当な指示薬フェノールフタレインとメチルオレンジから選び,色の変化とともに答えよ。

(1) アンモニア水を硫酸水溶液で滴定する。  (2) 酢酸水溶液を水酸化カリウム水溶液で滴定する。

(3) 水酸化ナトリウム水溶液を塩酸で滴定する。  (4) シュウ酸水溶液を水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。

 

(1) 弱塩基に強酸 メチルオレンジ 橙黄から赤  (2) 弱酸に強塩基 フェノールフタレイン 無色から赤

(3) 強塩基に強酸 メチルオレンジ 橙黄から赤, フェノールフタレイン 赤から無色

(4) 弱酸に強塩基 フェノールフタレイン 無色から赤

 

【中和滴定の実験で用いる器具】

メスフラスコ

正確な濃度の溶液を調整するために用いる。正確にはかり取った試料を純水に溶かし,これを完全にメスフラスコに移し,さらにその標線まで純水を加えると,メスフラスコに表示されている体積の水溶液を調整できる。

 
 

ホールピペット

一定量の液体を正確にはかり取る器具。標線まで液体を吸い上げ,この液体を自然流下させると,ホールピペットに表示された体積が容器に入れられる。

 
 

ビュレット

滴下した溶液の体積を正確にはかり取るための器具。滴下する前の体積を読み取り,ついで終点に達したときの体積を読み取ると,それらの差から滴下した溶液の体積をはかり取ることができる。

 
 
 コニカルビーカー

 振っても液体が飛び出さないように,上部の口をすぼめたビーカー。

 

注意

ホールピペットとビュレットはモル濃度が決まった溶液を使用するので,使用するときは,これらを使用する溶液ですすいでから使用する。これを〔 共洗い 〕(共液洗浄)という。メスフラスコとコニカルビーカーは含まれている物質の物質量が変化しなければいいので,使用するときは純水でよくすすいだ後,ぬれたまま使用してよい。

器具の目盛りの読み方は,水溶液の液面が表面張力によって下にへこんでいる部分を読む。